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    イリヤで遊ぶ

    遊んだ結果がこれだよ!!!!

    9/27日追記
    REIAさんから挿絵を二枚頂きました!ありがとうございます!
    不快な音が耳に響く。
    バチ、バチと裂けた電線から火花が散っていた。
    気が付くと、まるでSF映画のような近未来的な実験室に見える。
    機械で出来た台座の上に、カプセルが載っており、それが大量に。
    だが、その中身は空っぽ、どころかガラスが割れて破壊しつくされた後のような雰囲気すら感じる。
    一体、何が。
    自分のカラダはどうやら、十字架のようなものにかけられていていた。
    コスチュームはカレイドルビーのままだが、ルビーの気配を感じない。
    長時間この体勢だったのか、腕は正座から解放された足のように痺れて感覚が失われかけている。
    喉もカラッカラで声が出せない。
    なるべく冷静になろうと目を閉じる。

    「フヒヒッ…いりやちゃぁん…♪ようやく捕まえたぁ…」

    ドブネズミのような声が聞こえる。
    即座に不快感を増し、ゾッと背筋を震わせた。
    目を見開けば、ガリッガリの骸骨のような背の高い男が居る。
    髪の毛はぼっさぼさ、無精髭が生えて身だしなみも汚い。
    街で見かけたら目を背ける類の容姿。
    ソレが、彼女をみながらくねくねと恍惚の表情を浮かべている。
    気持ち悪い、とはこういう事だと言わんばかりだ。
    しかし、イリヤは彼を凝視した。
    ローブを纏った彼の手には、イリヤの持つステッキがあったのだ。

    (ルビー…!)

    だが様子がおかしい。
    明らかに魔法少女モノだったそれは、どす黒く変色し、ピクピクと痙攣している。
    彼に何かをされたのだろうか。
    いや、おかしい。
    あの杖は高度な魔術礼装で、解析すら不可能なはずなのに。

    「フヒッ…ボクねぇ、常々思って居たんだよ、イリヤちゃんはママになる素質があるって。」

    唐突に意味の分からない事を口にし始める男。
    その瞳には、熱意と言う名の狂気が籠っていた。

    「だから、ママになってもらうんだ。皆の…」

    ドォン!

    研究室の天井に大穴が空く。
    そこに立っていたのは、二人の少女。
    クロと美遊であった。

    「イリヤ!大丈夫!」

    心配する美遊。
    それに何とか、笑みを返す。
    しかし、事態は不味い事になっていると気づいていた。
    降りたつ二人に、男はニヤリと笑みを浮かべる。

    「お友達かぁ…いいねぇ、ドゥヒッ…フヒッ…でもねぇ、もう準備は整ったんだよぉ…」

    懐からカードを取り出す。
    それは見たことの無い絵柄をしていた。
    よくわからない、赤黒く描かれた文様。
    九つの丸が描いてあり、その一つが塗りつぶされている。

    「夢幻召喚…」

    そのカードを、ルビーにかざした。
    ズズズ、とそれが沈み込んでいく。
    先ほどまで痙攣していたソレも、全く反応を示さなくなっていた。

    「姉さん!」

    美遊の横に浮かぶサファイアが叫ぶ。
    彼はそれをイリヤの腹に突き刺した。
    ドヂュッと鈍く怪しい音がして、ズブズブと入りこんでいく。




    ―――かないで―――
    ―――いかないで―――
    ―――れないで―――
    ―――はなれないで―――
    ―――わたしから、また―――
    ―――また、わたしをおいていかないで―――
    かえってきて―――かえって―――
    もういちど、わたしのもとに―――
    もういちど―――もういちど―――
    いえ―――いいえ―――
    もうにどと―――もうにどと―――
    わたし を あいさない で





    「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」

    イリヤの頭からメキメキと、山羊のような、竜のような角が生えてくる。
    ズクン、ズクンズクンと全身が脈動して、コスチュームが紐解け、胸の部分が丸出しのコスチュームへと。
    腰まで紐が上がっているショーツの真横、臍の辺りには青緑色の淫紋らしきものが浮かび上がる。
    髪の毛が身体を覆い尽くすほどに伸び、くすんだ水色に変わり、一部は三つ編みに変化した。
    赤かった瞳は少しピンク色になり、人ではありえない光を発し始める。
    しかしながら、体格は一切変わらず。
    ミキ、メキと異常な音を響かせるだけ。

    「お゛っ…お゛っ…ア、ァ…」

    腹の上からでも分かるほど、大きく子宮が浮かび上がったかと思うと、ギッと歯を食いしばって黒い泥を排出した。
    直感で分かる、アレは不味いものだと。

    「アハハハハ!やった、やったぞ…!我らが母が、ついに…!」

    ドヂュヂュッ

    後ろから貫手で貫かれる男。
    それは、イリヤだった。
    ただ無表情に、泥を注入し、ドロドロに溶かしていく。

    「ヒッ、ハハ、母がそうおっしゃるなら…!ひは、ヒハハハハハハハハ!」

    壊れたラジオのような悲鳴を上げながら、男は物言わぬ液体になった。
    彼が何を思って行動に至ったのかは分からない。
    そのような事はどうでもよいのだ、今この状況においては。
    泥がどんどん広がっていく。
    水たまり程度だったものが、まるで底なし沼のように。
    辺りに散らばっている瓦礫や、機械の残骸がズブズブと音を立てて。
    更に、そこから何人もの人影が出てきた。
    クロより肌の濃い色をした、イリヤである。

    「h\……n8……bZa<6ew@<6ew@<6ew@……」

    その細い喉からは聞き取れない謎の言語。
    だが、二人を呼んでいる事だけは分かった。
    虚ろな目をして、苦悶の表情をしているのだ。
    しかし、次の瞬間にはそれぞれがステッキを握り、突撃してくる。

    「イリヤ!今助けにいくから!」

    それでも先陣を切ったのはクロ。
    宙を蹴りながら、怪しげな泥を避けイリヤに突貫する。
    愛刀である二つの剣を振りかざし、斬ろうとした瞬間。
    泥の壁が突然現れた。

    「っ―――!!!」

    ドポッ

    湯銭したチョコレートを人形にかけたように、泥のコーティングを施されるクロ。
    そのまま慣性に任せて進み、ベシャッと音を立てながら着地した。

    「がぼっ…!!!」

    ギギ、ギギとさび付いた機械のような音を立てながら、頭を抱えもがき苦しむクロ。
    泥がどんどん体内に吸収され、浅黒かった肌がさらに濃く染まっていく。
    イリヤ達が一斉に飛びつくと、まるで運動会の棒倒しのような様相を呈した。
    ドロドロと溶けていく彼女達が、クロを包み込んでいく。
    本体のイリヤが、一歩一歩、彼女の元へと歩き出した。

    DKp4fg8UEAAkKMh.jpg



    「クロ…思い出して、貴女の生まれた理由を…」

    願望器としてなり変わるための存在、それがイリヤスフィール。
    だが両親は、その部分だけを封印した。
    凝縮された記憶は、意識を持ち、人格を得る、それがクロエ。

    「がっ!や゛っ!や゛めっ!」

    だが彼女もまた、知らない。
    アインツベルンが一体何をしてきたのかを。

    「奥から溢れてくる影を…」

    永遠に願望器をアインツベルンから遠ざける、因果を。
    第三次聖杯戦争の、ルール違反を。

    「あ゛っ!あ゛っ!あ゛…ごぽっ…」

    クロの金色の瞳、満月のようなそれが、赤黒く染まっていく。
    縁がゆらゆらと揺らめき、涙を流した。
    それは歓喜、恵みの雨。
    人理を燃やす灼熱の泥が、災厄が零れる。
    母なる海に混ざり合い、生命を産みだす羊水が、現世を滅ぼす力に満ちて行く。
    クロのカラダに赤いタトゥーが全身に行きわたる。
    服もボロボロと崩れ、赤い布がかろうじて残って居る程度。
    精神は塗り潰され、『ガワ』だけへと変えられていく。
    もう既に彼女は聖杯その物、そしてこびりついた悪の願いが顕現し始めた。
    どこか見覚えのある青年の後ろ姿がクロの脳裏に映る。
    だが、その名前が誰だったか思い出すことはもう出来ない。
    彼女は復讐者。
    この世全てを滅ぼす悪。
    人類にとって最弱の天敵。
    対となる歪んだ剣を握りしめ天を仰ぐ。

    「h\
    ウジュル、ジュジュルと音を立てながらイリヤ達が変貌していく。
    クロを取り込んだことにより、その力が合わさったのだ。
    更に、真っ黒な羽が生えると空へ向かって飛び立っていく。
    泥は既に建物を飲みこみ、山を覆い始めていた。

    「そん…な…」

    無限の魔力を引き出すカレイドステッキ。
    それを炉心にして生まれる人類悪。
    器の聖杯。
    彼女達の次の目的は分かっている。
    同じものを持っている、自分だ。
    逃げなくては、でも、イリヤを助けないと。
    いくら冷静な彼女でも、パニックにならざるを得なかった。

    「美遊ぅ…♪」

    DKqMysEUQAABv1C.jpg




    瞬間、後ろからイリヤに抱き着かれる。
    これはクロの能力…
    つまり、取り込んだ力を使えるのだ。
    甘い、甘い声が耳に響く。

    ズチュッ…

    「ひぎっ!」

    泥が、耳を覆う。
    怨嗟の声が聞こえる。
    人類廃滅の声が、新しく母になりたいという声が。
    足からジュルジュルと泥が浸食してくる。
    自分が自分でなくなっていく感覚。
    DNAの配列が変わっていっているのだ。
    足の細胞の一つ一つが溶け、消え、再構築されていく。
    イリヤに埋め尽くされて行く。
    恐ろしいのはそれが不快でない。
    苦しくない。
    気持ちいい…

    「el7……ひっ!」

    無意識に美遊は呟いた。
    口の端や鼻から、泥が漏れる。
    耳から入りこんだそれが、落ちてきているのだ。

    「ぎっ…あぁ…!」

    抱きしめ方が強くなってきた。
    ミシミシ、と音を立て、骨が一本一本折れる。
    まるで花を手折るように。
    その隙間を縫うように、泥が浸食してくる。

    「ひぎっ!やっ!ぎぎっ!んむっ!?」

    唐突にキスをされる美遊。
    イリヤは、そこから泥を流し込んだ。
    激痛に悶え、身体の機能が低下している彼女に抵抗する術などない。
    細い喉がゴクリゴクリと鳴って、飲み干していく。
    その度に、腹が煮えてゴボゴボと沸騰するような音がした。
    更に、イリヤは抱きしめ方を強めたり弱めたりすることで、から揚げの下味をつけるが如く泥を肉に染み込ませていく…。
    うじゅる、ぐじゅっと子供の泥遊びのような様子。
    美遊は目をひっくり返し、ヒクヒクと痙攣した。
    涙すら泥になっている。
    侵食はさらに進み、下半身は全て真っ黒になっていた。
    瞬間、イリヤは美遊の口を深く包むと、一気に吸い出し始める。
    ジュゾッジュゾゾゾとストローで飲み物を飲み干したような汚い音をさせながら、泥でグチャグチャになった美遊を取り込んだ。
    徐々に体積を減らしていく美遊。
    手足の先から、全身タイツのようにペラッペラになる。
    風船の空気を抜くようにぐぐっとカラダに押し付け、コクッコクッと飲む。
    気が付けば、彼女は完全に皮だけになってしまっていた。
    服もボロボロと崩れ去っていく。

    「あは…♪」

    またイリヤのカラダが軋み始めた。
    美遊と混ざり合い始めているのだ。
    自らのナカに完璧な自分を顕現させるために、身体の強度を上げる。
    それが目的。
    長く伸びていた髪の毛がショートヘアーにまで消え、瞳がオレンジ色に輝く。
    腹には淫紋が新しく浮かび上がった。
    尻と胸も多少肉付きはよくなったが、身長は伸びない。
    だが、中身の子宮部分は熟れ、ポッコリと腹が膨らむ。
    孕んだのだ。
    変化は少しのモノ、しかし、彼女は満足そうに腹を撫でた。
    娘を産むためには、魔力が足りない。
    世界の環境も違う。
    だから、滅ぼさなくてはいけない。
    イリヤは自然とそう思った。
    何かに思わされたのではなく。
    取り込んだ彼女達のために、楽園を築くことを決意した。

    「Ah―――」

    歌声が響く。
    山から土砂崩れのように押し寄せる泥の波は冬木市へと到達した。
    黙示録のラッパが吹かれ、人類廃滅の刻が訪れる…

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